初音「キャー、かわい〜。この車〜」

家でゴロゴロ、休日をのんびりエンジョイする初音嬢。何気なく雑誌を眺めていると、1台のクルマに目が留まったのだった。

初音「わたし、くるまにのるならこんなのがい〜。ちっちゃくって、まるっこくって、スタイリッシュで…。う〜ん、はちゅは知らなかったぞ、こんなキュートなクルマがあるなんて」

どうやらたまたま見かけたそのクルマに一目惚れをしてしまったよう。恋多き多感期にはありがちなこと。

初音「だけどこのクルマ、何て名前なのかなぁ? どこに売ってるのかしらん? うーん、あーでもないこーでもない。ぶつぶつぶつぶつ…。」

謎の男「……」

初音「ん?」

謎の男「……フッフッフ…」

ひとりごとをつぶやくその背後から忍び寄るものが……。ドアの隙間から部屋をのぞく怪しい影…。新人アイドル松嶋初音。今後のタレント生命にかかわる大ピーンチ!!?

初音「キャー、助けて〜!! だれか変態よ〜」

謎の男「わーまったまった……。ひどいな。ぼくだよぼく。マーくんだよ〜」

現れたのは、初音ちゃんのおともだち、子グマのマーくんだった。

初音「なんだ、マーくんか〜。あーびっくりした」

マーくん「ごめんごめん。おどかす気はなかったんだよ〜」

初音「もう〜。いくら仲のいいおともだちだって、家に入るときはチャイムくらい押してよね。はちゅはちょっとどきどきしたぞ〜」

マーくんと初音ちゃんは大の仲良し。出会ったのはいまから10年前のとあるイベント。以来、10年来の親友なのである。

初音「まったく。はちゅのひとりごと、ずっと聞いてたんでしょう? 見てるんだったら声くらい掛けてくれてもいいのに〜」

マー「夢中になってる時に声かけると怒るくせに〜。」

初音「うぐ・・・・・。」

マー「それより、初音ちゃんはミニが好きなのか〜。そのクルマはねー。ローバー・ミニというイギリスのクルマなんだよ」

初音「へーそうなんだー。ローバー・ミニね……。」

マー「初音ちゃんはまだ16だから、すぐには運転できないけどね。だけど、いまから乗りたいクルマを見つけるとはカンシンカンシン。クルマのことなら黄色い顔のニクイヤツ、このマーくんにまかせなさい」

じつはマーくん。クマの世界では知る人は知るクルマ博士。クルマについての知識はお手のモノなのだ。

初音「もー、マーくんったら。すっかりうまくごまかされたわ。ふーん、そうかー。イギリスのクルマなのね。どうりでオシャレなはずだわ」

マー「ローバー・ミニは、名エンジニア、アレックス・イシゴニスの手によって1959年につくられ、41年に渡って基本の姿を変えずに生産され続けた名車。FF駆動方式でありながら、エンジンを横置きにするという世界で初めての構造は以後の大衆車造りに大きな影響を与えたんだ」

初音「へー、マーくん、ホントクルマにくわしいのね〜」

マー「エッヘへ〜ン。クマはクマでも、遊園地でクルクルまわっているどっかの黄色いクマとは、できがちがうんですよ、できが」

自信たっぷり胸をはるマーくん。

初音「ただの駄グマではないってわけね」

マー「……駄グマって……!」

おちこむマーくん。

初音「世界で初めてとは。う〜んローバー・ミニ、くわしくはよくわからないけど、ただものではないわね。はちゅはますます気にいったぞ〜」

マー「ミニは世界中の若者に人気だからね」

初音「わたしこのクルマを見てみたいわ。となれば、さっそく車屋さんに直行よ。マーくんどこに売っているの?」

マー「ところがいまこのクルマ、すでに生産されていないんだよ」

初音「えー、じゃあもう買えないの〜。つまんないのぉー」

マー「ところがどっこい。ちゃ〜んと買うことも出来るんだよ〜!」

初音「はにゃぁ〜〜〜????」