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つぐらちゃんとの別れ

ワタシのおウチから最寄り駅までの通り道に
大きな二世帯住宅があり、そこの庭先に、いつも
「猫つぐら」が置いてありました。

「猫つぐら」とは、猫がすっぽり入って眠る小さなお部屋…というか、
屋根つきの丸いかごみたいなものです。

そのお家の猫つぐらには、いつもこげ茶色の縞ネコが入っていました。
外の通りから見ると、つぐらの中で寝ている頭がかすかに見えるんですね。

それでワタシは、通りかかった時にはいつも、
猫つぐらににゃんこが寝ていないかチェックしていました。
寝ている頭が見えると、「おーい」と声をかけます。
すると、その子はムクッと頭を起こして
寝ぼけまなこでワタシを見ます。
で、「なに、何か用事?」って感じでボーッとした後、
ワタシが話しかけても再び寝てしまうんです。
その姿が可愛くて、ついついお昼寝の邪魔をして
しょっちゅう声をかけてしまってたんですが、
ある時からその子が、通りでワタシに出会うと
「おおっ、キミのこと知ってるよぉ」って
あちらから声をかけてくれるようになったんです。

それ以来、彼を「つぐらちゃん」と呼んで仲良くしていたワタシ。
つぐらちゃんは、起きている時はとってもフレンドリーで、
ちょっとなでてあげると
「うわーい、たーのしいなぁ。ぐふふーん」と
嬉しそうにしてくれるし、
ワタシが彼がいることに気づかないでテクテク歩いている時でも
「ねーねー、ここにいるよー!」って
塀の上からアピールして来ます。

それで、「おおっ、つぐらちゃーん、元気してた~?」と
ワタシが言うと
「うんうん、元気だったよぉ」と、
道路に寝転がり、頭を地面にグリグリこすりつけて、
ぐふーん、ぐふーんとご機嫌ちゃんになるのでした。

男の子なので、けっこう行動範囲が広くて
つぐらちゃん宅から2ブロックくらい離れたところでも、
よく遭遇したものです。

絶対、本名は「つぐらちゃん」って名前じゃないハズなのに
ワタシがそう呼んでも怒らないし、
それどころかちゃんと返事してくれちゃう感じのいいにゃんこ、つぐらちゃん。
男の子なのに、とってもおしゃべりで
昼でも夜でも、ワタシに会うと、大きな声で一生懸命に
「あのね、あのねっ」っていっぱい話してくれます。

そんなつぐらちゃんに会うと、ワタシも気持ちがほんわかするので
駅からおウチに帰るときは、つぐらちゃんの家の前や
つぐらちゃんがお気に入りの広場の前を通って帰るようにしていたんです。

先日も、雨上がりの夕方、ワタシが帰宅するために歩いていたら、
横から「あれぇ、ミーちゃん」と言うつぐらちゃんの声がしました。
ふと見ると、よそのおウチのガレージに
つぐらちゃんがいました。
「こんなところまで遊びに来てるの?」と聞くと、
「そうだよぉ、ミーちゃんに会えて嬉しいなぁ。頭なでてよぉ」と
ガレージに寝転がっちゃったつぐらちゃん。

しばらくおしゃべりしているうちに
カワイイ女の子のにゃんこが10メートルくらい先にいるのに気づいたつぐらちゃんは
「ぼく、あの子と遊んでくるぅ。ミーちゃん、またねぇ」と言って、
わおん、わおーん、と叫びながら
女の子のところに駆け寄って行きました。

ワタシは、そんなつぐらちゃんの後姿に
「つぐらちゃん、またね~」と声をかけ、その場を立ち去りました。

そしてその数日後、いつものようにつぐらちゃんのお家の前を通ったら
そこには、大きなトラックが何台も停まっていました。
引っ越しのようです。
慌ててつぐらちゃんの姿を探しましたが、どこにもいません。
トラックはすでに荷物を積み終えていて、どこかへ出発してしまいました。
ガランとした庭先には、あの「猫つぐら」もありません。

引っ越しちゃったんだ…。
この間の雨上がりに会った時、つぐらちゃんはまだ、
自分のおウチが引っ越すなんて、知らなかったんだなぁ。
お別れも言えなかった…。

今日も一応、ワタシはつぐら宅の前を通ってみました。
やっぱり空き家です。
ふと玄関を見ると、ご近所のにゃんこたちが数匹、佇んで、
ドアに向かって必死に「ぴゃー」と鳴いていました。
つぐらちゃんの友達みたいです。
彼らはこのお家の人たちが引っ越ししたなんて知らないので
一生懸命に「遊ぼうよ~」と、つぐらちゃんを呼んでいるのでした。
性格の良かったつぐらちゃんだから、友達がいっぱいいたんですね。

何だかとっても寂しくて、すっかり落ち込んでしまいました。
昨日まで仲良く遊んでいた同じクラスの友達が
さよならも言わずに突然、いなくなってしまった感じです。

つぐらちゃん、いったいどこに行ったんだろう。
きっと急にケージに入れられて、車に乗せられて…
ビックリしただろうなぁ。
着いた先を見まわして
「ここ、どこだぁ? 知らないとこだよぉ。うわーん」
って泣いてないといいけど…。
猫は知らない場所に弱いからね~。

でもきっと、つぐらちゃんのことだから
すぐに新しいお友達を作るよね。
あのお気に入りの猫つぐらも一緒だし、大丈夫なはず。

そう思いつつも、今日もまた、
猫つぐらのあった庭の前を通り、
いるはずのないつぐらちゃんの姿を探してしまうワタシなのでした。

投稿者 mi-chan : 2007年12月14日 23:34

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